第三回現代日本彫刻展に際して(1969-図録)
宇部市の常盤公園でビエンナーレ(隔年)の形式で開催してきました現代彫刻展も、今年で第三回を迎えることになりました。それ以前のコンクール展をもふくめました現代彫刻展、またその前に開催しました集団60を主としました野外彫刻展を顧みますと、宇部市の野外彫刻展は十年の経過をもつことになります。その間、回を重ねるごとに、その年度の記録的な野外彫刻展として充実し、現代日本の彫刻界をいささか鼓舞し、またすぐれた新人作家を世に紹介する役目を果たしてきたと自負しております。そういう意味で、若い彫刻家諸兄の間で、いまでは、野外彫刻の故郷のような親しい感情を、この宇部市野外彫刻展に対して、懐いておられるのを、しばしば耳にいたします。これは、もちろん、彫刻家諸兄のエネルギー溢れる協力、宇部興産株式会社と宇部市民の方々、その他、多くの関係者の協力があったことは申すまでもありません。
現代彫刻は、戦前には一般化しなかった彫刻の新しい材料、鉄、真鍮、アルミニウム、ステンレス・スチール、セメント、プラスチックスなどを材料として使用し、自己の思想と現代のモラルとを一致させるべく苦闘していることは、これまた、申すまでもありません。第三回現代日本彫刻展に際して、これらの新しい材料のうち、ステンレス・スチール、アルミニウム、プラスチックスを材料として使用することをテーマとして、彫刻家諸兄に制作をお願いし、またこれらの材料を扱っておられる日本で有数の企業体に協力を申しでましたところ、積水化学工業株式会社、日本硝子繊維株式会社、日本軽金属株式会社、日本触媒化学工業株式会社、日本ステンレス株式会社が、われわれの企画テーマに対して熱烈に賛同していただいたことは、われわれのよろこびとするところであります。このことは、単に彫刻家諸兄の経済的負担を軽減するという意味ばかりでなく、野外彫刻展に際して企業体を現代日本彫刻の新しい関係を日本ではじめて実現し、将来、どのように展開するかはともかく、現代彫刻がコミュニティ(共同社会)の理想のなかに共動する契機となることを示すと思います。
第三回現代日本彫刻展は、上記のような三つの材料による企画展と、荻原守衛以後の近代彫刻を回顧する展観との二本立てにいたしました。
終りに、宇部市野外彫刻展に対して終始、変らぬ愛情をもちつづけられ、昨年、病歿されました前宇部市長、星出寿雄氏の冥福を祈ります。
毎日新聞社会長 田中香苗
宇部市長 西田竹一
日本美術館企画協議会会長 土方定一