第9回現代日本彫刻展に際して(1981-図録)
ビエンナーレ形式で隔年ごとに開催される宇部市立常盤公園・野外彫刻美術館の「現代日本彫刻展」は、ことし第9回展を迎えることになりました。
それ以前の、同公園で開催したわが国はじめての大規模な「宇部市立野外彫刻展」「全国彫刻コンクール応募展」をも併せて数えますと、丁度20年の歳月を経たことになります。第2次世界大戦後の廃虚のなかから立ち上った宇部市の、他のどこよりも早い、緑と花の町運動に彫刻が結びつき、自由ではつらつとした野外空間のなかに彫刻が解放され、わが国の現代彫刻が大衆の前に大きく姿を表わしてから20年経つ訳です。
その間「現代日本彫刻展」は、現代彫刻の多様にひろがる材質追及をはじめ、「形と色」「彫刻のモニュマン性、「現代彫刻の抽象と具象と」「彫刻のなかのポエジー」をテーマにさまざまな機能を追及し、その都度記録的な野外彫刻展として充実させ、戦後の彫刻界に大きく寄与するところがあったと自負しています。
これはひとえに、いつも心よく参加していただいた彫刻家諸氏の積極的なご協力と、宇部市民のかたがたや宇部興産株式会社、その他一般のかたがたの彫刻に対する愛情によることは申すまでもありません。
今回はこの20周年を記念して、「現代日本彫刻展」が追及した歩みの原点ともいうべきテーマとして、「緑の町と彫刻」をとりあげて広く一般公募し、模型作品コンクールによって多数のなかから選ばれた入選作33点のうち10名に実物大制作をお願いするとともに、同じテーマの招待部門、特別招待者15名とを併せて展示することにしました。同時に、同じ会場に他の模型作品入選作も展示してあります。
今回もまた、意欲あふれる野外彫刻展となったことを、ともに歓びといたします。
なお、20周年と、宇部市制60周年を記念して、わが国はじめての、「21世紀の都市デザインを考える全国シンポジウム・ひろばと緑と彫刻と」が、「第9回現代日本彫刻展」開催とともに宇部市で行われたことをご報告いたします。
終りに、宇部市の、野外彫刻展の生みの親、育ての親として、また戦後のわが国彫刻界の発展に大きな足跡を残された運営委員長の土方定一氏が、昨年12月、享年75歳をもって亡くなられたことに対し、心からの哀悼の意を表します。
昭和56年10月1日
宇部市長 二木秀夫
現代日本彫刻展
運営委員会委員長 河北倫明
毎日新聞社長 山内大介