第10回現代日本彫刻展に際して(1983-図録)
宇部市野外彫刻美術館(常盤公園内)で開催される「現代日本彫刻展」は、ことし、第10回展を迎えることになりました。
思えば、ビエンナーレ形式で隔年ごとに開催されたこの「現代日本彫刻展」の10回の歩みのなかには、戦後のわが国現代彫刻がその表現を多様にひろげるのに大きな推進力となったこと、彫刻が本来的にもつべき社会的機能を追及し、彫刻を現代に息づかせたこと、自由ではつらつとした野外空間のなかに彫刻を解放し、大衆に近づけたことなど、戦後の彫刻界はもとより、わが国現代社会に大きく寄与するものが多々ありました。
これはひとえに、いつも快よく参加していただいた彫刻家諸氏の積極的なご協力と、宇部市民のかたがた、宇部興産株式会社、その他一般のかたがたの、彫刻に対する愛情によることは申すまでもありません。
前回の第9回展のときには、「現代日本彫刻展」となる前にひらかれた「宇部市野外彫刻展」「全国彫刻コンクール応募展」を併せて数えると、宇部市での野外彫刻展がはじまって以来丁度20年を迎えることから、また宇部市制60周年の年に当っていたことから、第9回現代日本彫刻展とともに、わが国はじめての、「21世紀の都市デザインを考える全国シンポジウム・ひろばと緑と彫刻と」を併せて開催したのでした。
全国から参加して熱気あふれる有意義なシンポジウムとなったのでしたが、したがって22年目に当ることしの第10回展は、これまでの過去をふまえた新たな出発という感が深くあります。
幸い、第10回展では、「人間讃歌」をテーマとして一般公募いたしましたところ多数の応募者があり、前回に劣らない力作、優作が寄せられました。公募の模型作品コンクールのなかから選ばれた入選作30点のうち、10名に実物大制作をお願いするとともに、同じテーマの特別・招待作品11点とを併せて展示することにしました。同時に、同じ会場に他の入選作模型作品も展示してあります。
ことしもまた、意欲あふれる野外彫刻展となったことを、ともに歓こびといたします。
なお今回は、「現代日本彫刻展」の第10回展を記念して、宇部市の野外彫刻展の生みの親、育ての親であり、また戦後のわが国彫刻界の発展に大きな足跡を残された前運営委員長、故土方定一氏を偲ぶ、第10回展記念(土方定一記念)特別賞を設けました。
昭和58年10月1日
宇部市長 二木秀夫
現代日本彫刻展運営委員会委員長 河北倫明
毎日新聞社長 山内大介