第12回現代日本彫刻展に際して(1987-図録)
隔年ごとに開催される宇部市常盤公園の「現代日本彫刻展」は、ことし、第12回展を迎えることになりました。「現代日本彫刻展」となる前には、一九六一年に開催の「宇部市野外彫刻展」、一九六三年の「全国彫刻コンクール応募展」がありますので、通算いたしますと、早や26年の歳月を経たことになります。
26年前といえば、第二次世界大戦におけるわが国の敗戦後、廃虚のなかから立ち上がった宇部市の「緑と花」の市民運動に彫刻が結びつき、それが他のどこよりも早く、自由ではつらつとした野外空間のなかに戦前の屋内鑑賞彫刻を解放したのでした。
その後、同展では、現代彫刻の多様にひろがる材質追究をはじめ、「形と色」「彫刻のモニュマン性」「現代彫刻の抽象と具象と」「彫刻のなかのポエジー」をテーマにさまざまな機能を探求、そして近年には、「緑の町と彫刻」「人間賛歌」「風土と彫刻」をテーマに、自然と彫刻との調和や交響を追究して、その都度、時代時代の記録的な野外彫刻として充実させ、戦後のわが国彫刻界に大きく寄与するところがあったと自負しています。
これはひとえに、いつも心よく参加していただいた彫刻家諸氏の積極的なご協力と、宇部市民のかたがたや宇部興産株式会社、その他一般のかたがたの彫刻に対する愛情によることは申すまでもありません。
今回は、はつらつとした野外空間のなかに彫刻を解放した原点ともいうべきテーマとして「太陽讃歌」をとりあげて広く一般公募し、模型作品コンクールによって多数のなかから選ばれた入選作のうち11名に実物大制作をお願いするとともに、同じテーマの招待部門10名とを併せて展示することにしました。同時に、同じ会場に模型作品入選作も展示してあります。今回もまた、意欲あふれる野外彫刻展となりましたことを、ともによろこびといたします。
なお、この第19回展には、このとし、宇部市緑化運動推進委員会がサントリー地域文化賞を受賞した際の副賞100万円を、そのまま特別記念賞として同委員会から「現代日本彫刻展」に寄贈されましたこと、また、今回からテレビ山口株式会社の積極的かつ永続的なご協力を得ることができましたことをご報告いたします。
昭和62年10月1日
宇部市長 中村勝人
現代日本彫刻展運営委員会委員長 河北倫明
毎日新聞社長 山内大介