第15回現代日本彫刻展に際して(1993-図録)
宇部市常盤公園で開催するビエンナーレ形式(隔年毎)の現代日本彫刻展は、本年第15回展を迎えることになりました。「現代日本彫刻展」となる前には、わが国はじめての大規模な「宇部市野外彫刻展」(1961年)、「全国彫刻コンクール応募展」(1963年)がありますので、通算いたしますと、早や32年の歳月を経たことになります。
これらの宇部の野外彫刻展は、第二次世界大戦におけるわが国の敗戦後、廃墟の中から立ち上がった宇部市の「緑と花」の市民運動に彫刻が結びつき、それが他のどこよりも早く、野外空間のなかに彫刻を自由ではつらつとして開放したのでした。
その後、同展では現代彫刻の多様にひろがる材質追求をはじめ、「形と色」「彫刻のモニュマン性」「現代彫刻の抽象と具象と」「彫刻の中のポエジー」などをテーマに彫刻のさまざまな機能を探究、さらに近年には、「緑の町の彫刻」「人間賛歌」「風土と彫刻」「太陽讃歌」「光と大地」「宇部讃歌」をテーマに、自然と彫刻との調和や新たな都市づくりを追求して、その都度、時代時代の記録的な野外彫刻として充実させてきました。
これもひとえに、いつも心よく参加していただいた彫刻家の方々の積極的な御協力と、宇部市民の方々、宇部興産株式会社、テレビ山口株式会社、その他一般の方々の彫刻に対する愛情によることは申すまでもありません。
今回は、節目となる15回を記念し、現代彫刻のさらなる発展と飛躍、夢と大きな可能性
をめざして「翔(はばたく)」をテーマとして広く一般公募し、模型作品コンクールによって多数のなかから選ばれた入選作のうち9名に実物制作をお願いするとともに、同じテーマの招待部門10名とを併せて展示することにしました。同時に、ときわ湖水ホール(常盤公園内)に模型作品入選32点も展示してあります。今回もまた、意欲あふれる野外彫刻展となりましたことを、ともによろこびといたします。
平成5年10月1日
宇部市長 藤田忠夫
現代日本彫刻展運営委員会委員長 河北倫明
毎日新聞社社長 小池唯夫