UBE BIENNALE

宇部の石炭 〜石炭染めチャレンジ〜

石炭×彫刻 WEBコラム
「炭都探訪 1955-1975 石炭×彫刻 未来へのモニュメントのかたち」関連企画

宇部の石炭で染めたらどんな色になるのか?石炭染めに挑戦しました!

宇部の大地に眠る石炭層は、新生代古第三紀の始世紀(今から約4〜6万年前)のものと言われています。恐竜が絶滅し、マンモス等の哺乳類が栄え、メタセコイア等の植物が繁茂した時代で、大森林となった樹木が洪水等で倒木となって押し流され、海岸等の水中に堆積し、微生物、地圧、地熱、火山活動によって炭化が進み炭層を形成しました。

ときわ公園には、今でも江戸期の石炭採掘跡である「山炭生(やまたぶ)」が複数残っていますが、付近で採取される石炭は、長いあいだ地表に出ていたため風化して、燃えない状態となっています。


「宇部炭田発祥の地」の碑


常盤校区「わくわく常盤」の皆さんが保存に取り組んでいます。


石炭の露天掘り跡が残っているエリア

この度の企画展に合わせ、宇部の石炭に関するリサーチの一環として、山炭生の石炭の欠片を使った染め物づくりに挑戦しました。染料の制作については、本市の地域資源である赤間石や竹炭を使った染料やインクを制作されている田中杏侑さんにご協力いただきました。


地表に露出している石炭

*石炭染めの工程は、世界を旅する植物館のブログで紹介しています。ぜひご覧くだい。

語り手:染色作家 田中杏侑(以下、T)
聞き手:UBEビエンナーレ推進課学芸員 三浦(以下、M)
インタビュー:2020年10月

M_同じときわ公園内の3施設が協力して、石炭をトピックに何か一緒に出来ないだろうか?という話の中で、すでに赤間石という石を使って染め物をされていた田中さんに、石炭から染料が作れないだろうか?とご相談することになったわけですが、まず、田中さんと赤間石の出会いを教えていただけますか?

T_6年くらい前に、うべ探検倶楽部という企画があり、その中で「赤間硯を作ろう」という体験がありました。子供の頃から赤間硯は山口県の伝統工芸で大変貴重なものだと教わってきました。しかし赤間硯を持っているわけではなく触れる機会もなかったため、ワクワクした気持ちですぐに申し込みました。当日は、日枝玉峯堂の日枝陽一先生から硯の歴史について説明があり、それから実際に彫ってみるのですが、機械は一切使わず全て手彫り、手磨き。もう本当に大変な作業でした。

作った硯は、漆をかけて仕上げるため、後日取りに行くことになりました。その時に「ちょうど赤間石を掘る坑道に行くんだけど、行く?」と誘っていただきました。軽トラに乗って何もない狭い山道をボコンボコンと揺られながら採石場に向かいました。採石から硯になるまでの気の遠くなるような時間と技術に感動し、伝統を受け継いでおられる先生への尊敬を覚えました。

M_季節が良くないと行かれないとか、坑道は水に浸かっているというよう話を聞いたことがあります。

T_坑道の中までは見ていませんが、水を抜くところからだと聞いています。火薬で弾き、赤間石を採石する。危険の伴う作業であることを目の当たりにしました。工房には赤間石の硯にならない部分が山積みになっていたので、「これはどうするんですか?」と聞くと、「山に捨てる」と言うので、捨てないで!と即座に思いました。先生が命懸けで掘ってきて、時間をかけて気も込めて彫っている赤間石です。小さな破片でさえも、捨てずになんとか輝かせることしてみたいから使わせてほしいと頼み込みました。

M_鮮烈な出会いですね。そこから赤間石で染色をしてみようと思った経緯は?

T_受け継がれてきたものを、何か違う形で手に取ってもらえたり、知ってもらえたらいいなと思っています。アクセサリー作りはもともとやっていたので、最初はアクセサリーを作るところから始めました。赤間石を削る時に粉が出て、手や布に色が付きます。それは先生ももちろん気づいていて、相談しながら染めてみようということになりました。

染めてみようと決めたものの、全くの手探り状態でした。京都に行ったり、熊本に行ったり、色々なところに出かけて行って習ったりしました。草木染めや藍染めをされているところは多くありますが、鉱物を布に定着させるのはなかなか難しく、色々と調べてやっと今の方法に辿り着きました。

M_赤間石で染めてみて、周りの方の反応はどうでしたか?田中さんにとって、赤間石の石としての魅力って何でしょう?

T_赤間石は顕微鏡で見ると、とても粒子が細くてキラキラしています。私にとっては宝石と同じ。唯一のパワーストーンのようなものです。まだ始めて間がないのと、コロナの影響もあり活動はあまり進んでいませんが、赤間石から染料ができたこと、またそこからインクが作り出せたことは、新しく初めての試み。山口県を代表する自然のもの、廃棄されるものからの活用で、山口県の宇部市が素敵なところだなと思ってもらえると良いなと思っています。

M_今年の2月に、小野地域に竹LABOもオープンしましたが、宇部産タケノコや竹バイオマス発電など、竹は宇部の中山間地域で、その活用に取り組んでる素材のひとつですね。竹炭染めはどんな感じで始められたのですか?

T_竹もやっぱりいろいろ取り組まれいて、竹炭(たけすみ)も作られていました。竹炭には、マイナスイオンとか消臭とか良い作用があると聞いて、もしかしたらいい染料になるのではないかと思いました。それで同じように工程を重ねて見ると、染料が出来ました。染め上がりも真っ黒ではなく、グレーのような、墨汁で半紙に書いたような上品な味のある色が出来ました。

赤間石でも竹炭でも、こんな材料から染料やインクを作ることができて、それがこんな色になるんだという発見が面白いなと思います。新たに採掘したり伐採したりせず、環境に負担をかけない資源の活用がとても好きです。

M_環境への優しさだったり、身近にあるものを活用しようという思いは、どこから来るのでしょう?

T_小学生の頃、たまたまカラスノエンドウか何かを摘んで、便箋に挟んでぽんっと置いておいたことがありました。しばらくして開けてみると薄紫のような薄緑のような、なんともいえない色が紙に移っていました。それが自然のものを面白いと思った最初の記憶かもしれません。子供心に神秘的な体験でした。
また私の母は田舎の出身で、自然と共に生き、ものを無駄にしないひとでした。海や山に連れて行ってもらい、その中で遊び方だったり、食べられる野草だったり、服のリメイクを教えてもらいました。「物にも魂がある。だからただの物だと思わずに大切に使いなさい」とよく言われました。そういったことが染み付いているんだと思います。

M_石炭染めに実際に取り組んでみて、いかがでしたか?


完成した石炭の絞り染め

T_石炭は昔の人たちが掘って使ってきたもの。またもっと昔はメタセコイアなどの古代植物が何万年もかけて地下で固まったものなので、歴史というか、ロマンを感じます。

まず石炭の見た目は黒いので、黒い染料ができると思っていましたが、パンッと割ったときに、こげ茶だったので驚きました。最初は石炭を砕いて、普通の草木染めのように煮てみましたが、色はあまりつかなったので、別の方法で染料にしました。出来上がった染料で染めてみると薄いベージュのような色合いに仕上がりました。これが、昔から宇部の土地にあったものの、天然の色なんだと思いました。茶褐色のような、良い色だと思いました。


水に染料を混ぜ、布を浸します。


染料が馴染むようゆっくり混ぜます。


布を広げて乾かします。

M_この石炭染料を使って、これからどんなことができそうですか?

T_そうですね、もしできるならこれを使って糸を染めて織物もしてみたいです。赤間石でも石炭でも、この土地の歴史あるものを材料にして、染め物をすることで、過去と未来を繋げることができたら嬉しいです。また、ものの見方ややり方によって、新しいものができたり、面白い発見ができるということを、子供達に伝えていきたいです。

M_石炭で染めたものが、こんなにきれいな色合いに仕上がったことは、本当に嬉しい発見でした。今年はコロナの影響で思うように活動出来ませんでしたが、落ち着いたらこの染料を使って、石炭染めのワークショップをしてみたいですね。

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